2006年07月29日

短期的な評価は、真のリーダーを産まない

成果報酬が当たり前のように日本の企業に取り入れられています。

多くは半期ごとの評価を行い、
この評価によりボーナスの額が上下します。

企業でこの制度が取り入れられた当初は、
働かないで給料を多くもらっている社員と、
多くの成果を出しているのに給料が少ない社員の
不公平感をなくすのではという期待がありました。

しかし、実際には給与計算の8割がたが勤続年数や年齢で
決まるため、不公平感の是正には程遠いものでした。

逆に弊害として、短期的な視点しか持たない社員が増えました。

長期的に大事な仕事でも、
その年の評価につながらないのであればやらない、
という社員が多く現れたのです。

リーダーはチームメンバーよりも遥か遠くを見据えていなければなりません。
それがリーダーの役割であり資質の一つです。

しかし、短期的な評価を導入することで、
真のリーダーに必要な長期的な視点が欠けた社員しか育たなくなったのです。

これは制度自体の問題でもありますし、
運用を行うマネージャークラスの問題でもあります。


一つには、目標設定時の問題があります。

成果主義を導入していても、
3年後、5年後のキャリアプランを考えさせた上で、
単年度の目標設定をさせれば、
長期的なビジョンを持って働くようになります。

しかし、多くのマネージャーは忙しさにかまけて、
各社員に目標を立てさせ、
ほとんどそのままの状態で承認します。

コメントするにしても、帳尻あわせであり、
長期的な考えからの修正ではありません。

この時点で多くの社員は、
この短期的な目標がすべてなのだと信じてしまうのです。


もう一つの問題は、評価のフィードバック時にあります。

多くの企業はABCDという4段階の評価をしています。

報酬の原資は決まっており、
A評価をもらう人数が一番少なく、
いわゆる「期待通り」という評価であるC評価をもらう人数が最も多くなります。

問題なのは、この評価の伝え方です。

マネージャーは多くの社員にC評価を伝えなければなりません。

本来「期待通り働いてくれた。ありがとう」という意味のC評価は、
ABCDの中の下から2番目です。

多くの社員は「オレは平凡な社員としてしか評価されていない」と
感じることが多いのです。

「いくら頑張っても評価されない」という感情を抱いた社員は、
さらに短期的な視野狭窄に陥り、
無難な仕事選び、無難な目標設定に走ります。

そして最も評価を得られそうな売れ筋の仕事に飛びつき、
本来最も必要な、新しい企業の未来を創る、
創造性の高い仕事は敬遠されてしまうのです。

M&Aでしか成長できない大企業は、
内部から湧き出る創造性を、
組織的に封印してしまっているのです。


本来、マネージャーは表面的なC評価という事実を伝えるだけではなく、
社員の出した成果を最大限ねぎらわなければなりません。

そして、結果を計測するだけでなく、
プロセスの評価やリーダーとしての成長という観点での
フィードバックをしなければなりません。

社内の規定で決められている評価は短期的であっても、
マネージャーは長期的な視点を持ってフィードバックしなければならないのです。

「今年は準備段階だから、あともう少しの辛抱だ。
会社の制度上、売り上げの上がらない仕事は評価できないようになっているが、
オレはお前の仕事を高く評価している。
3年後、このプロジェクトが花開いたら、盛大にやろう。」

こういった言葉が、社員に勇気を与えます。

そうすることで、
多くの社員はC評価という短期的な結果にこだわらず、
クリエイティビティの高い仕事に邁進してくれるのです。


そして何度もブログで書いていますが、
評価される側の社員は、
今の時代、評価を目標に働いてはいけません。

どれだけ成果を上げられるか。
そして自分の歩いてきた道を飾る実績をどれだけ作れるのか。

そういう志向で働く必要があります。

評価する会社や上司は、いつなくなるか分かりません。

まやかしの評価に寄りかかるのではなく、
成果と実績という決して消えない勲章をめざして頂きたいのです。
posted by ターレス今井 at 10:29| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | リーダーの仕事術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月10日

PMPが果たせることと、その限界。

プロジェクトのリーダーにも認定試験があります。

それが米国PMIのPMPという制度。
正確には、リーダーではなく、プロジェクト・マネージャー
力量を推し量る試験です。

PMPの良さは、プロジェクトを9つのマネジメント要素に分解し、
マネジメントの観点を整理し体系化していることです。

これにより、プロジェクト・マネジメントの経験が浅い人間でも、
プロジェクト全体を俯瞰した思考を身につけることができます。

現場で体験することと同時にPMPを学べば、その相乗効果はかなり
高いものになります。(これは経験的な意見ですが。)

要は、プロジェクトの各時点で何に気をつければ良いのか、
管理するべきことにモレがなくなるのです。

モレがないというのが、マネジメントの基本です。
その人に少しでもモレがあった場合、まわりの人間の感じる危機感
というものは途轍もないものがあります。

”今最も優先するべき”とまわりの人間が考えている仕事を、
リーダーが認識していなかった場合などは、
途端にその人をリーダーと見なさなくなります。

「え?まだ外注先に打診なんかしてないけど」
などという不用意な発言で、一気に信頼を失うわけです。

そういう観点からすると、
最低限のマネージャーを育てるという意味で、
PMPは非常に効率的な学習制度・学習体系に仕上がっていると思います。


しかしながら、
私はPMPの世界のプロジェクト・マネジメントというものは、
狭い意味でのプロジェクト・マネジメントなのではないかと思っています。

つまり、PMPでのプロマネは単なる”やりくり屋さん”という意味合いが
非常に色濃いのです。

「与えられたお金と時間内にやり終わればそれでよい」
それだけのマインドで終わりがちなのです。


例えば、マネジメント項目の一つにスコープ・マネジメントがあります。
すなわち、そのプロジェクトにおける成果物を定義し、
クライアントと約束をして、作るものが途中で変わったりしないように
するということです。

プロマネがPMPを学んだ場合、
クライアントが「こういう機能を追加したいのだが」
というような打診をしてきた場合、本当に良く状況を理解したプロマネでなければ、
要件追加を排除するような行動に出てしまいがちです。

これは、PMPの弊害です。

実際には、PMPの中でもスコープの変更は検討を充分にして決定するように、
教えられています。

ですが、プロジェクトの期間がこれだけ短縮された今の世の中では、
PMPの教えは「スコープの変更はまずは断ること」というように曲解されても
仕方がないのではないでしょうか。

そして、決められた予算で、決められた期間でなんとか仕事を終わらせるため、
本来の目的を見失うことがあると思うのです。


本当のプロジェクト・マネジメントとは、
プロジェクトが始まる大分前から始まっていなければなりません。

特にITシステムのプロジェクトの場合、
受注時にほぼそのプロジェクトの成功と失敗は決まってしまいます。

クライアントの世の中に提供したいものは何なのか?
そのために必要なシステムとは何なのか?

そういうところから本当に検討し、
それを実現するために猛者を集めてプロジェクト化
できるようなプロマネがあるべき姿なのだと思います。


しかし実際は、
クライアントの夢の実現ではなく、
自社の売り上げを少しでも上げるために人は行動してしまいます。

そして、値段勝負の過当競争に陥り、
想定の工数や必要な機能など、
往々にして非現実的な過小数値で割り出されたままプロジェクトが始まり、
赤字プロジェクトに化けていくのです。

そして、そこに投入されたプロマネは、
イヤでもやりくり屋を演じるしかありません。
クライアントの経営戦略なんてものは読んでいる暇もないのです。


今の世の中に必要なのは、やりくり屋のプロジェクト・マネージャーではありません。

「人が喜ぶものは何なのか?」
「今、われわれが提供するべき価値とは何なのか?」
そういうアイデアを豊富にもち、それを企画化し、
さらにプロジェクトとして立ち上げられるようなリーダーが求められているのです。

魂の込められたプロジェクトであれば、
スコープはプロジェクト中にでもどんどん良いものに進化していくはずです。

クライアントとはパートナーであり、
プロマネ自らが様々な提案をしていくでしょう。

そして、スコープの変更に耐えられるだけのリソースや仕組みを、
最初から準備しているはずなのです。


そういったリーダーの育成がPMPでは充分ではありません。
プロマネは、やはりマネージャーでしかないのです。

今の時代に本当に必要なのは、
創造型リーダーです。

企業は、そのあたりを考慮した上で、
社員育成をしていくべきでしょう。

posted by ターレス今井 at 00:48| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リーダーの仕事術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月03日

自分を信じる力

前回も書きましたが、
リーダーには寄りかかるものがありません。

自分が機軸となり、羅針盤となってチームを方向付けしなければなりません。

このときに自分を信じる力がどれだけあるかが、
リーダーシップの大きな差になってきます。

では、この自信はどこから生まれるものでしょうか?


リーダーに必要な自信は、
自然と身につくものではなく、
意図的に鍛えるものではないかと思います。

今のビジネス環境では、
プロジェクトの期間は圧倒的に短くなっています。

こういった状況では、若手がチームメンバーとして
失敗をしながらも徐々に力をつけていくということが
難しくなっています。

一昔前のように、現場に若手をぶち込めば、
勝手に一人前になった時代とは少し違うのではないかと思うのです。

今では、プロジェクトの中で能力を磨き、
リーダーとなる資質を蓄積できるのは、
偶然か先天的に秀でている極少数の人間だけです。

プロジェクトで経験する、
リーダーシップに関する”気づきの格差”というものが起こり、
個人間のスキルの格差が生まれてきます。

こういった環境では、ビジネスマンの世界において、
経済的な格差ではなく、スキルとマインドにも、
二極化が進んで行くのではないかと思います。


ですので、インタンジブルな「自信」の醸成を、
会社の仕組みとして取り組む必要があるのではないでしょうか。

個人の努力に委ねるという、悠長なことはしていられない時代なのです。


posted by ターレス今井 at 17:19| 東京 🌁| Comment(7) | TrackBack(0) | リーダーの仕事術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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