2006年07月10日

PMPが果たせることと、その限界。

プロジェクトのリーダーにも認定試験があります。

それが米国PMIのPMPという制度。
正確には、リーダーではなく、プロジェクト・マネージャー
力量を推し量る試験です。

PMPの良さは、プロジェクトを9つのマネジメント要素に分解し、
マネジメントの観点を整理し体系化していることです。

これにより、プロジェクト・マネジメントの経験が浅い人間でも、
プロジェクト全体を俯瞰した思考を身につけることができます。

現場で体験することと同時にPMPを学べば、その相乗効果はかなり
高いものになります。(これは経験的な意見ですが。)

要は、プロジェクトの各時点で何に気をつければ良いのか、
管理するべきことにモレがなくなるのです。

モレがないというのが、マネジメントの基本です。
その人に少しでもモレがあった場合、まわりの人間の感じる危機感
というものは途轍もないものがあります。

”今最も優先するべき”とまわりの人間が考えている仕事を、
リーダーが認識していなかった場合などは、
途端にその人をリーダーと見なさなくなります。

「え?まだ外注先に打診なんかしてないけど」
などという不用意な発言で、一気に信頼を失うわけです。

そういう観点からすると、
最低限のマネージャーを育てるという意味で、
PMPは非常に効率的な学習制度・学習体系に仕上がっていると思います。


しかしながら、
私はPMPの世界のプロジェクト・マネジメントというものは、
狭い意味でのプロジェクト・マネジメントなのではないかと思っています。

つまり、PMPでのプロマネは単なる”やりくり屋さん”という意味合いが
非常に色濃いのです。

「与えられたお金と時間内にやり終わればそれでよい」
それだけのマインドで終わりがちなのです。


例えば、マネジメント項目の一つにスコープ・マネジメントがあります。
すなわち、そのプロジェクトにおける成果物を定義し、
クライアントと約束をして、作るものが途中で変わったりしないように
するということです。

プロマネがPMPを学んだ場合、
クライアントが「こういう機能を追加したいのだが」
というような打診をしてきた場合、本当に良く状況を理解したプロマネでなければ、
要件追加を排除するような行動に出てしまいがちです。

これは、PMPの弊害です。

実際には、PMPの中でもスコープの変更は検討を充分にして決定するように、
教えられています。

ですが、プロジェクトの期間がこれだけ短縮された今の世の中では、
PMPの教えは「スコープの変更はまずは断ること」というように曲解されても
仕方がないのではないでしょうか。

そして、決められた予算で、決められた期間でなんとか仕事を終わらせるため、
本来の目的を見失うことがあると思うのです。


本当のプロジェクト・マネジメントとは、
プロジェクトが始まる大分前から始まっていなければなりません。

特にITシステムのプロジェクトの場合、
受注時にほぼそのプロジェクトの成功と失敗は決まってしまいます。

クライアントの世の中に提供したいものは何なのか?
そのために必要なシステムとは何なのか?

そういうところから本当に検討し、
それを実現するために猛者を集めてプロジェクト化
できるようなプロマネがあるべき姿なのだと思います。


しかし実際は、
クライアントの夢の実現ではなく、
自社の売り上げを少しでも上げるために人は行動してしまいます。

そして、値段勝負の過当競争に陥り、
想定の工数や必要な機能など、
往々にして非現実的な過小数値で割り出されたままプロジェクトが始まり、
赤字プロジェクトに化けていくのです。

そして、そこに投入されたプロマネは、
イヤでもやりくり屋を演じるしかありません。
クライアントの経営戦略なんてものは読んでいる暇もないのです。


今の世の中に必要なのは、やりくり屋のプロジェクト・マネージャーではありません。

「人が喜ぶものは何なのか?」
「今、われわれが提供するべき価値とは何なのか?」
そういうアイデアを豊富にもち、それを企画化し、
さらにプロジェクトとして立ち上げられるようなリーダーが求められているのです。

魂の込められたプロジェクトであれば、
スコープはプロジェクト中にでもどんどん良いものに進化していくはずです。

クライアントとはパートナーであり、
プロマネ自らが様々な提案をしていくでしょう。

そして、スコープの変更に耐えられるだけのリソースや仕組みを、
最初から準備しているはずなのです。


そういったリーダーの育成がPMPでは充分ではありません。
プロマネは、やはりマネージャーでしかないのです。

今の時代に本当に必要なのは、
創造型リーダーです。

企業は、そのあたりを考慮した上で、
社員育成をしていくべきでしょう。

posted by ターレス今井 at 00:48| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | リーダーの仕事術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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